サラかえで『Romance』 ライナーノーツ

序文

「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」

サザンオールスターズ40周年ツアーはとにかくやばかった。心が震えるほど魅せられてしまったのは記憶に新しい。

 今もなお、時代の先を走っている彼らの“轍”には、反骨精神、青春のフラッシュバック、あの頃の情熱、官能な世界、笑いの精神、そしてなにより熱いエネルギーが爆発していた。我々が駆け抜けてきた時代を鮮明に蘇りさせ、不安なこれからをぶち壊すような力が、彼らにはあった。


 DAISUKE YAMADAの楽曲にはそんなサザンオールスターズ、桑田佳祐が下敷きになっていることは間違いない。彼の音楽の根本にあるUS・UAロックバンドやブルース、フォーク、歌謡曲、また映画やお笑いといったエッセンスも盛り込まれた、音楽ジャンルの幅が感じられる作風のミュージシャンである。

 “ポップス”と言い切ってしまうのはどうかとも思うのだが、彼らの楽曲は耳心地のいいアレンジと歌詞の遊び心、センスでミックスした胸に響いてくるような曲調は、年代問わず聴いてもらえる構造になっているように思う。

 そんな中にも、抱える侘しさや寂しさ、考え方の違いによる戸惑いなど、悩める世界、社会の現実を、それに対する彼の温かい目線で見守ってくれるようなメッセージが込められていることも忘れてはならない。


 前置きがながくなってしまったが、ファーストアルバム「Romance」学生のころから彼の曲を聴き続けていた私にとっては、待ちに待ったアルバムである。個人的にも大満足なこの作品を、一曲でも多く方に聴かれることを願っている。


 ではみんな一緒に…「これぞDIYミュージック!浪漫…いつまでもRomance!!」



「Y.O.N」

 いきなりYAMADAさんらしい曲だなとニヤリ。電子音のポップなメロディにのせて、ゾクゾクとする妖艶なナンバーに仕上がっている。SNSでの競いやナイトプールでの磨き合い、いわゆる意識の高いそれって、本当に美しいもの?滑稽じゃない?ほんとに魅力的なの?と疑問を呈している。とはいえナイトプールの女はエロい(これに異論はないはずだ!)それは絶対わかった上で出来た曲のはず。Sexyに歌い上げる韻踏みの言葉遊びに、インスタ映えより大事なものを見つけてほしい。バカなあなたも私も彼もLonely night。

 タイトルの意味や、意識した楽曲などは、彼のライナー・ノーツ(歌詞カードにあり)を確認してください。私は「山田・王・長嶋」のクリーンアップだと解釈しています。多分合ってる。



「Day by Day」

“Merry Christmas Mr. Lawrence.”

 愛への敬意というものは持っていたいものです。敬意は愛だけには限りませんね。尊敬する人や憧れに対してもですね。想像していた現実とのギャップ、未来への不安、そして愛している(または愛していた)人への未練。自分に置き換えてしまうと苦しくなってしまうほどの、切実な嘆きがDAY BY DAYと繰り返される。ただただ儚いRomance。Lone someに変わるところがにくい…

 (戦場のクリスマスも宇多田ヒカルも関係ないかもしれない。でも彼は好きなはず。デヴィッド・ボウイも関係ないかもしれない。「Day In Day Out」って曲はあったけど全然違う。でも彼は好きなはず)



「ロマンティックよ永遠に」

 アルバムのコンセプトにピッタリと嵌る大切なピースである一曲。サザンオールスターズ「キラーストリート」+ビートルズなサウンドとリズム。

 別れた後に自問自答を繰り返す「幸せ」とは?「思い出」とは?ロマンティックに浸りながら、季節は流れていく。“あの瞬間に流れた一瞬の煌めき”みたいなものを、彼はいつでも大切に閉まっている。この曲を聴きながら過去を懐かしみ、少し癒されてみてはどうでしょうか?

 私の知らないこんな失恋を彼がしているなんて…どうして教えてくれなかったの?笑



「片付けられない男」

 タイトルや唄い出しから奥田民生(ユニコーン)とレミオロメンが浮かんだのだが、私の勝手な想像の域を出ない。

 男と女の恋愛観・価値観のズレ。どうしても理解できず、もがき苦しむのは男の方である。“片付けられない”そんな男に共感できないわけがない。みんなそうなんだ。

「だからこうするべきなんだ!」という押し付けがましい、答えのないことに勝手な意見を歌詞に乗せるものではなく、優しく寄り添うスタンスが垣間見えると思う。

 トータスのドキュメンタリー映画「Myway Highway」の真似事を以前彼としたことがある。自由気ままに曲を制作する過程は、非常に楽しいものであった(9割以上お笑い旅行だったけど)旅の成り行きを歌詞にして、ひとつのコンセプトアルバムに。さらに動画も公開なんかしてまた出かけたいものである。

 「ポンコツ二人旅」「バスに間に合わない―Ran―」「予定通りにいくわけない」もう3タイトル思いついてしまった笑



「SOUND OF WAVES」

 夏の匂いが舞い上がり、あの日々を思い出す。憧れの町への期待、故郷の安心感。ふと思い出すと過る、あの感情はなんなのであろうか?

 通りすぎた季節に、夢や希望に溢れた自分を重ねて、この曲で思いを馳せるのもいいかもしれない。しっとりとしたメロディにのせて“やるせないもの”と真剣に向き合う真摯な歌詞。

 彼自身の悩みでもあり、まぁ私の悩みでもあったわけだが…納得のいく答えを自分自身でみつけるしかない。“誰”といるかが大事だったりするわけで(女!女!女!!とはいってない)

 大好きなあの曲へのオマージュだったことも嬉しい限りだ。



「KJ」

 割愛したいところなんですが…私にとっては大切な1曲なんです笑

東京にいると、地元の記憶が失われたり忘れたりする。そうすると色々なことが面倒になってきて、帰省しないという選択肢が出てくる。でもなんだかんだ帰ると、両親がいて友達がいて、いつものお店や風景があって、「なんだやっぱり変わってないじゃん」と安心するのである。

 本当に元気がでる歌だ。最後の歌詞は田舎が恋しいすべての人類に響くはずだ。それ以外の歌詞は、それぞれ内輪ネタに改変して盛り上げればいい(失礼ですいません笑)

 ちっとも変っていないこと、辛い思いでなんてどうでもいいよ、これはもう“KJ”と書いて“おかえり”と読む(案外間違えではない)



「クラゲ」

 水族館のクラゲがいる水槽には、吸い込まれてしまいそうな幻想的な美しい世界が広がっている。暗い過去は水底に、上を向けば光があるから。

 水槽を見つめる二人、過去も今もそしてこれからも、ゆらゆらとクラゲのように二人で漂えばなんとかなる。そんなことを思い描いた歌ではないだろうか。

 光を捧げよう キラキラ ハナミヅキってこれ違うわ。



「ベイビーベイビー」

 渋谷と青森の恋。無理をして付き合ってる感覚と、彼女に捨てられないか心配な思い、でも好きだっていうね。踊りだしたくなるような軽快なテンポに、長渕節も炸裂するラップにノリノリで音に身を任せてみよう。

 彼と歩いて見て感じたあの日が、歌に昇華された(一部ではあるが)ことが誇らしくもあり、尊敬する。こんな素晴らしい楽曲が出来上がるなんて。

 ちょっと背伸びしたような、無理無理言いつつも、恋が止まらない。Baby,I love you。

「せ、せ、青春なんだな」(山下清)



「柴又より愛をこめて」

 前曲と一緒で、彼のライナー・ノーツ読んでいただければ詳細はわかるのだが、柴又に住んでいた私のもとに、フーテンの寅さんの如くふらっとやってきて「風の吹くまま気の向くままってやつだよ」という名台詞を残す勢いで、遊んで踊って飲んでというわけです。

 結局のところどんな大人になりたいんだろう?自分はどうなってしまうんだろう?という漠然とした不安を取り除き、大人になりきれない年代に勇気を与えてくれる。

 馬鹿話笑い話無駄話。いつまでもはしゃいでいいのかな。いいじゃないか。さぁ飲もう飲もう。YAMADA仕込みの包容力に身を任せてみましょう。

 個人的にはシングルカットを希望するぐらいに思い入れのある楽曲。

 



「波音に消えてゆく」

 「男はつらいよ 純情編」の冒頭を思い出してしまった。海の波音に身を任せ、しっとりと聞き入りたい1曲。

 出会いや別れに浸ること。潮の匂いや音を感じながら、たまにはいいんじゃないでしょうか。短いながらも、力強いフレーズとバラードの叙情詩をご堪能ください。



「新たな暮らしのなかで」

 私は東京に残るか、地元に帰るか、正直悩んでいた。決断もできずにいた。東京での人脈をすべてクリアしてもいいのか?地元青森で地域に貢献するべきではないか?天秤にかけ、決めかねているとき、この曲が私に選択をもたらしてくれたのだ(奇しくも彼の込めた意味とは真逆の結果となってしまうわけだが笑)

 せつない楽曲が多い中で、前向きなポップソング。アルバムの終わりは清々しい気分で、次の行動へ軽やかなに移れそうになってしまう。

 序文で述べた魅力のすべてが詰まった“寄り添ってくれる”ラストソング。



終わりに

なんてことは書きません。次のアルバム、そしてまた次のアルバムが待っているのだから。私は期待に胸がいっぱい、心がいっぱいで、DAISUKE YAMADAファン1号として今後も応援し続けます。


サラかえで



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